〜藤本弘〜

敬愛する藤本弘氏に。


■尊敬する人

尊敬する人は誰か?と問われたらどうしよう、と思う。
医師界に属する自分としては、やはり医学的に有名な人の名前を
あげるべきだろうか。
そう言われたらオスラーという人の名前があがるのだろう。
「医学はサイエンスに基づいたアートである」
「本なしで疾患の現象を学ぶのは、海図のない海を航海するようなものだ。その一方で、患者なしで本を学ぶのは、全く海にこぎ出さないのと同じだ。」

数々の名言があり、教授陣も好んでオスラーの言葉を用いる。


しかし、自分にはまだそこまで医学に没頭したことがなく、臨床経験も
乏しく、オスラーを尊敬できるほど医学に習熟してないと言えるだろう。


藤本弘

だから、もし正直に、「尊敬する人」を問われたら、
恥ずかしながら「藤本弘」と答えそうだ。

藤子・F・不二雄である。



今更彼のどこが好きか、とか何が好きか、とかを書こうとは思わない。

理解できない人にとっては、所詮漫画家の一人だろうし、
ドラえもん」の作者、としか認識されないだろう。

しかも、無理して書いても理解されないばかりか、CASTERの乏しい表現力では
藤子・F・不二雄の、出会ってから20年近く、CASTERの心を捕らえて離さない
その魅力を、余すところなく表現できるとは思わないからだ。


だから、藤子・F・不二雄自身の言葉をここに書いて終わろうと思う。

彼がスタッフに当てた手紙である。



「毎日ごくろうさまです。
今回は特に大変だったと思います。
深く感謝しております。

感謝しながらこんなことを書くのは申し訳ないのですが、
欲が出たと言いますか・・・・。

この機会に徹底的に僕の理想像を聞いて欲しいと思うのです。


言いたいことはコピーへの書き込みを見れば分かってもらえるでしょう。
欠点ばかりを指摘した結果になりましたが、今後少しずつでも
理想像に近づいていければと思っています。
総集編。単行本化。二度の機会にできる範囲で改訂してください。


漫画家がベテランになると絵やアイディア創りのコツがわかってきます。
このときが一番の危機なのです。
ついつい楽に仕事をしようとする。
こうなるとあっと言う間にマンネリの坂を転げ落ちることになります。


自戒の意味も込めて言うのですが、
漫画は一作一作初心にかえって苦しんだり悩んだりしながら描くものです。
お互いガンバリましょう。

『藤子プロ作品は藤子本人が描かなくなってからグッと質があがった』

と言われたら嬉しいのですが。

                         藤子・F・不二雄


あぁ・・・。先生。
先生が描けなくなってから、藤子作品は見れるものではなくなりました。

今は先生の思う夢の世界を描く作品ではなく、
ただただ商業的価値を生むだけのドラえもんがいます。


もう少し早く産まれて、あなたが筆を取っていたころに
一度お会いしたかった、と心から思うCASTERです。