〜蘇れブライアン!〜

馬が走る姿を見ていると、この世で最も美しい動物だと思う。


ミホノブルボン

CASTERは競馬を見るのが好きだ。
金は賭けない。
でも見ているだけでも好きだ。
馬一頭一頭にドラマがある。


好きな馬の一つにミホノブルボンがいる。
三冠馬にはなれなかった最強の逃げ馬。
史上最強の逃げ馬、というと、他にもサイレントスズカなどがいるが、
CASTERの中ではブルボンが一番だ。


「逃げ馬」
発走から先頭に立つその勇姿。
普通の競馬のイメージでは、先頭に立った馬は第四コーナーで差し馬の餌食と
なり、後方の馬群へと沈んでいく。
しかし、1992年の日本ダービー、クラシックG1のミホノブルボンは凄かった!


ライスシャワーマチカネタンホイザなど名馬の揃う中、いきなり飛ばして18頭
の先頭に立つ。
そのまま第三コーナー、第四コーナー・・
後続がどんどん差をつめてくる。


二番手ライスシャワーとの差は「半馬身」までつめよられた。
ああ・・逃げるのもここまでか・・と思ったそのとき。

「さぁ有力馬がここからブルボンに襲いかかる第四コーナーカーブ!
府中の直線500メーター!!ここからブルボン未知の世界!」


なんということだ。
追い付かれかけたブルボンが猛然と走り始めた。


「しかしブルボン先頭!ブルボン先頭!リードは二馬身から三馬身、
ブルボン先頭!ブルボン先頭!ブルボン三馬身から四馬身!
おそらく勝てるだろう!おそらく勝てるだろう!
もう大丈夫だ!2400を三馬身から四馬身!五馬身で逃げ切ったぁー!」


凄まじい逃げだった。
第四コーナーに来た時、大概の逃げ馬は疲れ切って失速していく。
しかしブルボンはそこから更に後続を引き離して圧倒的勝利をあげたのだ。
最初から最後まで先頭を譲らず、堂々の勝利。


こののち、ブルボンは「無敗の三冠馬」をかけた92年の菊花賞ライスシャワー
の猛追に破れ、ターフを後にするが、あの勇姿は未だに脳裏に焼き付いて離れない。



ナリタブライアン

20世紀の名馬100選で堂々の一位に輝いた文字通りの最強馬である。
10年ぶりの三冠馬
セントライトシンザンミスターシービー、そしてシンボリルドルフ・・
確かに刻み込まれた五頭目の三冠伝説。
20世紀最後の三冠馬


しかし最も魅力的にブライアンが見えたのは、その揺るぎない地位が危ぶまれて
からのことだった。

故障して復帰した後、95年の天皇賞秋で12位という惨敗。
ジャパンカップでも6位に終わった。

巷では言われた。
「ブライアンはもう終わった」と。
往年の強さにはほど遠い成績。
でもファンはブライアンを見たかった。

二位以下を5馬身以上突き放す、あの圧倒的なブライアンを。


そして96年阪神大賞展。
鞍上には武豊が乗っていた。
敵は昨年の年度代表馬、「マヤノトップガン」!



「今日はナリタブライアンを中心に実況していきたいと思います。
今日は勝っても負けてもナリタブライアン!」


そういった杉本清の実況で始まったレースは、第四コーナーから凄まじい
二頭のたたき合いとなった。



マヤノトップガンと、外からナリタブライアン
昨年の年度代表馬。一昨年の年度代表馬。大歓声の上がる阪神競馬場!」


二頭が完全に抜け出した。
一騎打ちだった。


「大歓声の上がる阪神競馬場!大歓声の上がる阪神競馬場
さあブライアン蘇れ!!蘇れブライアン!!
ブライアンは外!
武の左鞭!武の左鞭!
内からマヤノトップガン
ブライアン!
ブライアン!
ブライアン!
ブライアン出た!一年ぶりの勝利か!
内からマヤノトップガンが差し返す!
さあどっちだどっちだどっちだどっちだ!内か外か内か外か!
わずかに外かー!!!!」


この劇的な復活劇の後、ナリタブライアンは引退した。


復活を果たした馬というのは記憶に残る。
復活以前が凄まじかった馬というのはなおさらだ。


オグリキャップがそうだった。

「オグリは終わった」
そう言われてのぞんだ引退レース有馬記念
オグリは一着で有馬を制した。

引退レースで見せた奇跡の復活劇。
最後の最後で見せたスーパーホースの意地。
中山競馬場に響き渡る「オグリ」コール。



未だに映像を見ると涙が出てくる。